東京高等裁判所 昭和34年(ネ)600号 判決
かくて被控訴人が本籍地である奈良県生駒郡郡山町役場から協議離婚届出用紙の交付をうけ、これを持参して控訴人をその実家に訪ねたところ、控訴人は右用紙に自ら署名捺印はしなかつたが、離婚の届出をすることには異存はないと言明したので、被控訴人は控訴人に代つてその署名捺印をした上、右届書を郡山町長宛て提出したものであることが窺われる。控訴人は、有効な協議離婚手続をするには旧民法第八百十条、第七百七十五条の規定するように当事者が双方出頭して口頭でその届出をするか、そうでなければ、当事者双方が自ら署名した書面を以てしなければならないのに、本件届書には、当事者たる控訴人が自ら署名しうる状態の下にありながら自署せず、しかも控訴人自身が出頭して届出をしたものでもないから、右届出は違法であつて、右違法の届出による協議離婚は無効であると主張する。成程控訴人が前記届書に自ら署名したものでないこと、又自ら出頭して届出をしたのでないことはいずれも前説示のとおりであるが、旧民法の右各規定並びに本件協議離婚届出の際施行されていた現行民法第七百六十四条、第七百三十九条戸籍法第二十九条の各規定にいわゆる署名とは必ずしも自署であることを要するものでないことは戸籍法施行規則第六十二条に署名の代署について規定していることからも窺われる。かように控訴人、被控訴人等の間において本件協議離婚の合意が成立し、被控訴人が控訴人の右承認の下に単に届出書類の作成、届出をまかされている以上、控訴人が自ら出頭せず、又被控訴人が控訴人の署名を代署したとしても、これがために前記協議離婚が無効となるいわれはない。
(梶村 岡崎 堀田)